○ 関数 F(x) を微分すると f(x) になるとき, すなわち, F(x)=f(x) ⇔ f(x)dx=F(x)+C のとき,F(x) を f(x) の(1つの)原始関数,F(x)+C を f(x) の不定積分という. 例 (x2)=2x ⇔ 2xdx=x2+C だから x2 を 2x の原始関数,x2+C を 2x の不定積分という. ○ 関数 f(x) の1つの原始関数を F(x) とするとき,F(b)−F(a) の値を f(x) の a から b までの定積分といい, f(x)dx で表わす.すなわち, 実際の計算に当たっては, f(x) から F(x) を求めて,次に x=a , b を代入するために,
【要点】 定積分の定義
※ よくある間違いF(a)−F(b) ではなく F(b)−F(a) なので注意すること. 例1 2x dx=x2=22−12=3 |
注意 (x2+1)=2x (x2+2)=2x (x2+3)=2x だから,x2+1 , x2+2 , x2+3 , … も 2x の原始関数であり,2x の原始関数は1つではない. 定積分の計算には,そのうちどれか1つの原始関数を用いればよいが,計算が簡単なように C=0 となるものを用いる. すなわち, となり,どんな C の値を用いても差で消えるので,計算が最も簡単になる C=0 の場合を用いる. [なぜ原始関数を使うのか,なぜ差なのか,そんなことをして何になるのか] (教科書の項目として面積の項目は定積分の後に登場するが,)原始関数 F(x) は,関数 f(x) (>0) の下にできる図形の面積を表わし, F(b)−F(a) で a≦x≦b の区間の面積を表わせるので,このように定義すると豊かな応用が広がってくるのである. (b よりも左の面積)−(a よりも左の面積)=(a , b の間の面積) |
例2 右のように x の1つの原始関数は
x dx== −= 例3 右のように x2 の1つの原始関数は x2 dx== −= |
【不定積分の公式:復習】 xn の不定積分
xndx= +C ※ (xn+1)=(n+1)xn だから ( )=xn となる. |
問題1 次の定積分を求めよ.(やさしい) 初めに [ ? ] を1つ選び,続いて右の欄から解答を1つ選べ.正しければ解答が入り,間違っていればもとに戻る. |
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問題2 次の定積分を求めよ.(空欄を埋めよ) |
(1)
(2x+1)dx=
x2
+x
= (4+2)−(1+1)=4
(2) (3x2+2x)dx= x3+x2 =(1+1)−0=2 (3) (x2−2x+2)dx= −x2+2x =(9−9+6)−(−1+2)= |
○ 多項式の積や累乗の定積分
【要点】 (I)(II)は不定積分と共通の性質.(III)は定積分だけの性質
(II)は,数学IIIで学ぶ「置換積分」を用いて証明できるが,数学IIではその結果を利用する.(ここでは証明略)(I) 多項式の積や累乗の形になっているものは個別に積分することはできないので,被積分関数を展開してから原始関数を求めるのが基本. (II) 多項式の累乗の積分については次の公式がある. (x+a)ndx= +C (ax+b)ndx= +C (III) 2次関数のグラフと直線とで囲まれた図形の面積を求めるときに,次の公式を用いると便利である. ax2+bx+c=0 の2つの解を α,β (α<β) とするとき (ax2+bx+c)dx=− あるいは a(x−α)(x−β)dx=− (III)は,(II)の結果を用いて次のように証明できる. (ax2+bx+c)dx=a(x−α)(x−β)dx =a(x−α)(x−α+α−β)dx =a{(x−α)2+(α−β)(x−α)dx = a+a(α−β) =a+a(α−β)−0=a−a =− |
(I)の例 (x−1)(x−2)dx=(x2−3x+2)dx=−x2+2x =( 9−+6)−0= (x+1)2dx=(x2+2x+1)dx=+x2+x =( +4+2)−( +1+1)= (II)の例 (x+1)2dx=+C (2x+1)4dx=+C (III)は次のア)のように積分区間の両端が ax2+bx+c=0 の2つの解 α,β になっているときだけ成立し,イ)のように積分区間の両端が ax2+bx+c=0 の解でないときは(III)の公式は使えないので注意を要す. 2x2−6x+1=0 の2つの解を α,β とすると,α,β= β−α= このとき,(2x2−6x+1)dx=−=−=− ※積分区間の両端が根号を含む式で表わされるときは,この公式があると助かる. |
問題3 次の定積分を求めよ.(空欄を埋めよ) |
(1) (積の形で書かれた多項式は,展開してから積分を求めるのが基本) (x−1)(x+2)dx =(x2+x−2)dx=+−2x =( +2−4)−(0) = (2) (2x−3)2dx =(4x2−12x+9)dx =−6x2+9x=( −24+18)−( −6+9) = (この問題は (II) の公式でも解くことができる) (3) x2(x2−1)dx =(x4−x2)dx =−=( −)−(−+) = (4) (x−1)(x−2)dx =(x2−3x+2)dx =−+2x=( −6+4)−( −+2) =− (この問題は (III) の公式を用いて,α=1 , β=2 , β−α=1 とすれば直ちに解ける.) (5) 2x2−8x+5=0 の2つの解を α,β (α<β) とするとき α= , β= , β−α= だから (2x2−8x+5)dx =−=− =−2 |
■解説
定積分 において,f(x) を被積分関数,a を積分区間の下端,b を積分区間の上端という. 定積分の性質を,(I)被積分関数についての性質,(II)積分区間の性質 に分けてまとめると次のようになる.
【定積分の性質 I 】
※ 上の性質は,定数倍と和(差)については,積分計算と順序を入れ替えても結果は変らないことを表わしている(線型性).・・・ただし,関数の積や商と積分計算の順序を入れ替えると,もとのものと等しくならない.したがって,次のような変形はできないので注意を要する.kf(x) dx=kf(x) dx …(1) {f(x)+g(x)} dx=f(x) dx+g(x) dx …(2) 一般に, {sf(x)+tg(x)} dx=sf(x) dx+tg(x) dx …(3) (x+1)(x+2) dx ⇔ (x+1)dx(x+2)dx dx ⇔ |
■参考■ 左記の定積分の性質(I)は,次の不定積分の性質をそのまま反映したものとなっている. kf(x) dx=kf(x) dx {f(x)+g(x)} dx=f(x) dx+g(x) dx 一般に, {sf(x)+tg(x)} dx=sf(x) dx+tg(x) dx ■参考■ 左記の定積分の性質(I)は,必ず使わなければならないというものではない. 例 ○ 次のように計算すれば,この性質を使わずにそのまま計算していることになる. {x2+3x} dx=+x2=(+6)−(+)= ○ 次のように計算すれば,この性質を使って分けて計算していることになる. {x2+3x} dx=x2 dx+3x dx=+x2 =(−)+(6−)= ※ 簡単な計算問題では,この性質(I)を使わずに求められる. |
【定積分の性質 II 】
(4) : 積分区間の下端と上端を入れ替えると符号が逆になる.f(x) dx=−f(x) dx …(4) f(x) dx=0 …(5) f(x) dx=f(x) dx+f(x) dx …(6) (5) : 被積分関数が何であっても,積分区間の下端と,上端が等しければ,定積分は0になる. (6) : 何個かの積分区間に分けて計算してよい. |x2−1|= x2−1 (x<−1) −x2+1 (−1≦x<1) x2−1 (1≦x) ={−x2+1} dx+{x2−1} dx =−+x+−x =(−+1)−0+(−2)−(−1)=2 ※よくある間違い・・・次のような変形はできないので注意 |x2−1| dx ⇔ |(x2−1) dx| |
(証明) (4)← f(x) dx=F(a)−F(b)=−{F(b)−F(a)} f(x) dx=F(b)−F(a) だから,(4)が成り立つ. (5)← f(x) dx=F(a)−F(a)=0 だから,(5)が成り立つ. (6)← f(x) dx=F(b)−F(a) f(x) dx+f(x) dx ={F(c)−F(a)}+{F(b)−F(c)}=F(b)−F(a) だから,(6)が成り立つ. ■区間によって関数形が異なるときの定積分 例 f(x)=|x|= −x (x<0) x (0≦x) (答案) |x| dx=|x| dx+|x| dx ア) x≦0 のとき,f(x)=−x だから |x| dx=(−x) dx= − =0−(−)= イ) x≧0 のとき,f(x)=x だから |x| dx=x dx= =−0=2 ア)イ)より |
※絶対値記号の付いている関数の定積分は,多くの生徒にとって「何をしているのか分かりにくい」ようです.おそらく,それは定積分が分からないのでなく,絶対値記号をはずす訓練が十分でないからです.もし,以下の問題で「解説を読んでもまだ分からない」という人は,絶対値記号のはずし方の練習を先にやる方がよいでしょう. 問題4 次の定積分を求めよ.(空欄を埋めよ) |
(1) |x|dx =|x|dx+|x|dx=(−x)dx+xdx =−+ =0−(−)+( −0)=1 [なぜ0で分けるのか] 右図のように y=|x| のグラフは,x<0 のとき y=−x に等しく,x≧0 のとき y=x に等しく,x=0 のところで関数形が変るから [x<0 のとき・・・はどこに書いてあるのか] |x|dx が −1≦x≦0 の区間 での積分を表わす. (2) |x−1|dx =|x−1|dx+|x−1|dx =(−x+1)dx+(x−1)dx =−+x+−x =(−+1)−(−−1)+(2−2)−( −1) = [積分区間をどのように分けるのか] |x−1| の絶対値記号を外すには,| | の内部,すなわち x−1 の正負で分ける. x−1≧0 を解くと x≧1 となるから, x≧1 のとき,|x−1|=x−1 x−1<0 を解くと x<1 となるから, x<1 のとき,|x−1|=−x+1 そこで, |x−1|= −x+1 (x<1 のとき) x+1 (x≧1 のとき) となる. (3) |x2+x−2|dx =|x2+x−2|dx+|x2+x−2|dx =(−x2−x+2)dx+(x2+x−2)dx =−−+2x++−2x =(−−+2)−(0)+( +2−4)−( +−2) = 3 [積分区間をどのように分けるのか] |x2+x−2| の絶対値記号を外すには,| | の内部,すなわち x2+x−2 の正負で分ける. x2+x−2=(x−1)(x+2) だから x≦−2 , 1≦x のとき,|x2+x−2|=x2+x−2 −2≦x≦1 のとき,|x2+x−2|=−x2−x+2 (これ以外の区間は,この定積分に関係しない) そこで, |x2+x−2|= −x2−x+2 (0≦x≦1のとき) x2+x−2 (1≦x≦2のとき) となる. ※ 数学Iや数学IIでは,絶対値記号をはずすとき,次のように区間が重ならないように分類するのが基本であるが,定積分では区間の端が重複するように分けるのが普通である. . |x2+x−2|= x2+x−2 (x<−2 のとき) −x2−x+2 (−2≦x<1 のとき) x2+x−2 (x≧1 のとき) 0≦x<1 で定義され,x=1 で定義されていないときに, |x2+x−2|dx は,x=1 で困る.|x2+x−2|dx などと逃げると繁雑な表現になり,通常そのような分け方をしない. 定積分では から分かるように,端の点を重複して加えても影響がなく,区間を場合分けするときに,境目となる値 x=c などを「気楽に」両方の区間に重複させて, を使う. |
■[個別の頁からの質問に対する回答][定積分について/17.6.25]
問題(3)の(2)、(3)、(4)かいとうらんがありません。
■[個別の頁からの質問に対する回答][定積分の基本について/17.5.24]
=>[作者]:連絡ありがとう.PC版の方でHELPと解答の境目がずれたようですので,訂正しました. いつも使わせて頂いてます。ありがとうございます。
問題(4)でdxが重複しています。
■[個別の頁からの質問に対する回答][定積分について/17.4.29]
=>[作者]:連絡ありがとう.訂正しました. いつも楽しく拝見しています。
間違いと思われる箇所を見ましたのでご連絡させて頂きます。
当該箇所は、PCでfirefoxより見ていたところ、定積分のページで、
”○多項式の積や累乗の定積分”の要点Vの証明について、最後の式の-符号が抜けています。
下記該当箇所のコピペです。
(III)は,(II)の結果を用いて次のように証明できる.
β∫α(ax2+bx+c)dx=aβ∫α(x−α)(x−β)dx
=aβ∫α(x−α)(x−α+α−β)dx
=aβ∫α{(x−α)2+(α−β)(x−α)dx
=┌│└ a
(x−α)3
3+a(α−β)
(x−α)2
2 β┐│┘α
=a
(β−α)3
3+a(α−β)
(β−α)2
2−0=a
(β−α)3
3−a
(β−α)3
2
=
a(β−α)3
6
=>[作者]:連絡ありがとう.符号が1つ抜けていましたので訂正しました. |