■分数関数(有理関数)の不定積分 (部分分数分解,多項式割り算,平方完成を含む)
■要点
(特別簡単になるもの) 分子が分母の微分になっているとき (この場合は問題→即答とできる:この教材では「特急券あり型」と呼ぶ・・・教科書ではこんな方言は使われていないので,試験の答案には書かないように) dx=log|f(x)|+C (パターン1)真分数式の形になっているもの (⇔分子の次数が分母の次数よりも小さい形になっているもの) (1.1)分母が1次式の場合 =log|ax+b|+C (a≠0) (1.2)分母が1次式の累乗になっている場合 =(ax+b)−ndx (a≠0, n=2,3,...) =(ax+b)−n+1+C =+C dx (a≠0, n=2,3,...) 部分分数分解により →次の形に書ける. (+++...)dx →(1.1)と(1.2)の和に帰着する. (1.3)分母が何種類かの1次式の積になっている場合 dx (a, c≠0) 部分分数分解により →次の形に直せる. (+)dx →(1.1)に帰着する (1.4)分母が数種類の1次式の累乗の積になっている場合 dx (a,c ≠0, m, n=2,3,...) 部分分数分解により (+...++...)dx →(1.2)に帰着する (1.5)分母が2次式の場合
(判別式の符号が負で,実係数の1次式に因数分解できない場合)
(a≠0, b2−4ac<0)分母について平方完成を行う →次の形に直せる. = (A, B>0) ところで =tan−1+C
したがって =tan−1+C
※この形の不定積分を関数として表すためには逆三角関数を必要とするため,高校では扱われないのが普通.ただし,同じ形でも定積分は数値の差=定数となるから,この形の定積分は高校の範囲に入る. (1.6)分母が数種類の2次式の積になっている場合 dx (a,d ≠0,m,n=2,3,...) 部分分数分解により (+...++...)dx
→(1.5)に帰着する (パターン2)仮分数になっているもの (⇔分子の次数が分母の次数以上のもの) 多項式割り算を実行して商と余りに分けると,被積分関数は整式と真分数式に分けられる
〈〈上記の解説〉〉 クリック→ (特急券あり型) (1.1) (1.2) (1.3) (1.4) (1.5) (1.6) (2) (特別簡単になるもの)
[1]dx
分子が分母の微分になっているからすなわち(x2+3x+5)’=2x+3だから dx=log(x2+3x+5)+C
[2]dx
(x2+4)’=2xだからdx=dx=dx =log|x2+4|+C=log(x2+4)+C 常にx2+4>0が成り立つ.
(右上の欄へ)↑
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(1.1)
[1]dx
dx=log|2x+1|+C
[2]dx
dx=4×log|3x−1|+C=log|3x−1|+C(1.2)
[1]dx
=(2x+1)−2dx=(2x+1)−2+1+C =+C=−+C
[2]dx
次のような定数A,Bを求める.=+ 分母をはらうと 3x+5=A+B(x+1)=Bx+(A+B) 係数を比較すると B=3, A+B=5 → A=2, B=3 =+ したがって dx=(+)dx =−+3log|x+1|+C (1.3)
[1]
部分分数分解を行う= 次のような定数A,Bを求める =+ 分母をはらうと (x−1)(x+1)=A(x+1)+B(x−1)=(A+B)x+(A−B) 係数を比較すると A+B=0, A−B=1 → A=, B=− =(−) したがって =(−)dx =(log|x−1|−log|x+1|)+C=log||+C
[2]
分母を因数分解すると= 次の関係を満たす定数A,Bを求める =+ 分母をはらうと 1=A(x−2)+B(x−1)=(A+B)x+(−2A−B) 係数を比較すると A+B=0, −2A−B=1 → A=−1, B=1 =−+ したがって =(−+)dx =−log|x−1|+log|x−2|+C=log||+C (Case 1.4)
[1]dx
部分分数分解によって,次のような定数A,B,Cを求める=++ (中央の項を忘れないこと) 分母をはらうと 4=A(x+1)+B(x−1)(x+1)+C(x−1)2 =(B+C)x2+(A−2C)x+(A−B+C) 係数を比較すると B+C=0, A−2C=0, A−B+C=4 → A=2, B=−1, C=1 =−+ したがって dx=(−+)dx =−−log|x−1|+log|x+1|+C=−+log||+C
[2]
部分分数分解によって,次のような定数A,B,Cを求める=++ (最後の項を付けるのを忘れないように) 分母をはらうと 1=A(x+1)2+Bx+Cx(x+1) =(A+C)x2+(2A+B+C)x+A 係数を比較すると A+C=0, 2A+B+C=0, A=1 → A=1, B=−1, C=−1 =−− したがって =(−−)dx =log|x|+−log|x+1|+C=log||++C (1.5)
[1]
=tan−1+C
[2]
分母を平方完成する置換積分を行う. t=x+1とおく→dx=dt ==tan−1t+C=tan−1(x+1)+C (1.6)
[1]dx
分子の次数2が分母の次数1よりも高いから,割り算 を実行して多項式と真分数式に分ける.(2x2+2x+1)÷(x+1)=2x...1 2x2+2x+1=2x(x+1)+1 =2x+ dx=(2x+)dx=x2+log|x+1|+C
[2]dx
分子の次数1が分母の次数1と等しいから,割り算を実行して多項式と真分数式に分ける.(x+1)÷(x−1)=1...2 x+1=1(x−1)+2 =1+ dx=(1+)dx=x+2log|x−1|+C |
問題次の積分を求めよ. (下の選択肢から正しいものを選べ.)
(1)
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+C log|x+2|+C log(x2+4)+C log(x2+4)+C −+2log|x+2|+C tan−1+C |
(1.1)=log|ax+b|+C (a≠0)
a=1, b=2→=log|x+2|+C |
(2)
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+C log|x+2|+C log(x2+4)+C log(x2+4)+C −+2log|x+2|+C tan−1+C |
分母が2次式で実係数の1次式にで因数分解できない
→置換積分を行う x=2tantとおく ⇔ t=tan−1 →x2+4=4tan2t+4=4(tan2t+1) = =dt ところで,三角関数の公式を用いると 1+tan2t= したがって dt==+C=tan−1+C この形の積分にしばしば出会う人は,次の公式を覚えてもよい. =tan−1+C |
+C log|x+2|+C log(x2+4)+C log(x2+4)+C −+2log|x+2|+C tan−1+C |
分子に定数を掛けるだけで,分子は分母の微分に等しくなる.定数で割って掛ける→「特急券あり型」
dx=dx=dx =log(x2+4)+C |
+C log|x+2|+C log(x2+4)+C log(x2+4)+C −+2log|x+2|+C tan−1+C |
部分分数分解により,次のような定数A, Bを求める.
=+
最後の項を忘れないことが重要.この変形は計算を簡単にするために「分子」も(x+2)の累乗によって表すことに対応している.
分母をはらうと=+ 2x+5=A+B(x+2)=Bx+(A+2B) 係数を比較すると B=2, A+2B=5 → A=1, B=2 したがって dx=(+)dx =−+2log|x+2|+C |
−+C +C log|x2−4|+C log||+C x+2log|x+2|+C −+log||+C log||+C −2x+4log|x+2|+C |
分子の次数が分母の次数よりも高いかまたは等しいときは,割り算を実行して多項式と真分数式に分ける.
(x+4)÷(x+2)=1..2 (x+4)=1(x+2)+2 =1+ dx=(1+)dx=x+2log|x+2|+C |
(6)
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−+C +C log|x2−4|+C log||+C x+2log|x+2|+C −+log||+C log||+C −2x+4log|x+2|+C |
分母が1次式の累乗になっている→(1.2)
dx=(x+2)−2dx=x−2+1+C=−+C |
(7)
Help
−+C +C log|x2−4|+C log||+C x+2log|x+2|+C −+log||+C log||+C −2x+4log|x+2|+C |
部分分数分解により,次のような定数A, Bを見つける.
=+ 分母をはらうと 1=A(x+2)+B(x−2)=(A+B)x+(2A−2B) 係数を比較すると A+B=0, 2A−2B=1 → A=, B=− ゆえに =(−)dx =(log|x−2|−log|x+2|)+C=log||+C |
−+C +C log|x2−4|+C log||+C x+2log|x+2|+C −+log||+C log||+C −2x+4log|x+2|+C |
部分分数分解により,次のような定数A, Bを求める.
=+ 分母をはらうと x+6=A(x+4)+B(x+2)=(A+B)x+(4A+2B) 係数を比較すると A+B=1, 4A+2B=6 → A=2, B=−1 ゆえに dx=(−)dx =2log|x+2|−log|x+4|+C=log||+C |
−+C +C log|x2−4|+C log||+C x+2log|x+2|+C −+log||+C log||+C −2x+4log|x+2|+C |
部分分数分解を用いて,次のような定数A, B, Cを求める.
=++ 第2項を忘れてはいけない. 分母をはらうと 4=A(x+2)+Bx(x+2)+Cx2=(B+C)x2+(A+2B)x+2A 係数を比較すると B+C=0, A+2B=0, 2A=4 → A=2, B=−1, C=1 ゆえに dx=(−+)dx =−−log|x|+log|x+2|+C=−+log||+C |
−+C +C log|x2−4|+C log||+C x+2log|x+2|+C −+log||+C log||+C −2x+4log|x+2|+C |
分子の次数が分母の次数以上のときは,割り算を実行して商→多項式,余り→分子として,多項式と真分数式に分ける.
x2÷(x+2)=x−2...4 x2=(x−2)(x+2)+4 =x−2+ したがって dx=(x−2+)dx=−2x+4log|x+2|+C |