■三角関数の不定積分
≪要点≫
(I)三角関数の積は和に直してから積分する 2乗は半角公式で逃げる (II)f(sinx)cosx , f(cosx)sinx→置換積分 sin3x=(1−cos2x)sinxはその応用 f’/fは即答可能の特急券→log|f| (III)(多項式、指数関数)×三角関数→部分積分 ≪解説≫ (I)三角関数の積は和に直してから積分する
例1
右の積→和の公式(3)においてα=2x, β=3xとおくとsin2x cos3x dx sin2x cos3x= { sin(2x+3x)+sin(2x−3x) } = { sin5x−sinx } sin2x cos3x dx= (sin5x−sinx)dx = (− cos5x+cosx)+C = − cos5x+ cosx+C
例2
右の積→和の公式(5)においてα=4x, β=3xとおくとcos4x cos3x dx cos4x cos3x= { cos(4x+3x)+cos(4x−3x) } = { cos7x+cosx } cos4x cos3x dx= (cos7x+cosx)dx = ( sin7x+sinx)+C = sin7x+ sinx+C ○2乗は半角公式で逃げる
sin2x dxのように被積分関数が三角関数の2乗になって
いるときは、上記の積→和の公式においてα=βとおけば解決できるが、右の(9)’(10)’のように2倍角公式を逆に読んだもの(半角公式)で考える人が多い。
例3
sin2x dx= dxsin2x dx = x− +C |
※ 三角関数の積分は1つの公式を覚えただけでは解決できず、総合的な力が試される。すなわち、三角関数の積分を行うには、積を和に直す公式、部分分数分解、置換積分、部分積分など幅広い力を要する。 [将来との関連] 三角関数の積分(主に定積分)は高校卒業後に習うフーリエ級数において重要な働きをなしており、このフーリエ級数は様々な分野に使われている。例えば画像圧縮技術にも応用されている。 積→和の公式
加法定理
sin(α+β)=sinαcosβ+cosαsinβ …(1) sin(α−β)=sinαcosβ−cosαsinβ …(2) (1)+(2) sin(α+β)+sin(α−β)=2sinαcosβ これにより、次の積→和の公式が得られる
sinαcosβ= { sin(α+β)+sin(α−β) } …(3)
積→和の公式
加法定理
cos(α+β)=cosαcosβ−sinαsinβ …(4) cos(α−β)=cosαcosβ+sinαsinβ …(5) (4)+(5) cos(α+β)+cos(α−β)=2cosαcosβ これにより、次の積→和の公式が得られる
cosαcosβ= { cos(α+β)+cos(α−β) } …(6)
積→和の公式には、以上2つの他(4)-(5)によって得られる次の公式がある。
sinαsinβ= − { cos(α+β)−cos(α−β) } …(7)
cosαsinβ= { sin(α+β)−sin(α−β) } …(8)
半角公式
加法定理 cos(α+β)=cosαcosβ−sinαsinβ …(4) において、α=βとおくと余弦(cosθ)に関する2倍角公式が得られる。 cos2α=cosαcosα−sinαsinα =cos2α−sin2α =1−2sin2α …(9) =2cos2α−1 …(10) (9)より
sin2α= …(9)’
(10)より
cos2α= …(10)’
(9)’(10)’より
tan2α= …(11)’
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≪問題1≫ 次の不定積分を求めよ。 (正しいものを選べ。暗算ではできないので計算用紙が必要。) + +C − +C − + +C − − +C |
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− +C
− + +C − +C − + +C |
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+ +C
− +C + +C − +C |
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(II)f(sinx)cosx , f(cosx)sinx→置換積分
例4
sin2x cosx dx 置換積分を行う sinx=tとおくと =cosx→dx= sin2x cosx dx=t2 cosx = +C = +C
例6
= = 置換積分を行う cosx=tとおくと = −sinx→dx= − = dx= dx = = dt= ( − )dt = (log|t−1|−log|t+1|)+C= log|| +C = log|| +C= log( ) +C ※1−cosx≧0 , 1+cosx≧0で、等号のとき | | があってもなくても定義されない事情は同じ |
○ sin3x=(1−cos2x)sinxはその応用
例5
sin3x dx sin3x=sin2x sinx=(1−cos2x)sinx 置換積分を行う cosx=tとおくと = −sinx→dx= − sin3x dx=(1−cos2x)sinx dx =(1−t2)sinx = (t2−1)dt = −t+C= −cosx+C
例7
(1) dx (2)tanx dx ○ dx=log|f(x)|+Cは即答可能の特急券 f(x)=tとおくと =f’(x)→dx= dx = =log|t|+C =log|f(x)|+C そこで
「分子が分母の微分」→(即答可能の特急券)
→log|分母|が答 (1) dx= dx=log|1+sinx|+C この| |は( )に換えてもよい
(2) tanx dx= − dx= −log|cosx|+C
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≪問題2≫ 次の不定積分を求めよ。 (正しいものを選べ。暗算ではできないので計算用紙が必要。) +C − +C +C − +C |
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sinx+ +C
sinx − +C cosx+ +C cosx − +C |
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(3)
log( )+C
− log( )+Chelp log( )+C − log( )+C |
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(4)
log|sinx+cosx|+C
log|sinx−cosx|+C
dx
help
| |+C | |+C |
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(III)(多項式、指数関数)×三角関数→部分積分
例8
xsinx dx xsinx dx=−xcosx−1·(−cosx)dx =−xcosx+cosx dx =−xcosx+sinx+C |
部分積分
f’(x)g(x) dx=f(x)g(x)−f(x)g’(x)dx
多(単)項式は微分する側(次数を下げる側)に選ぶ
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例9
exsinx dx exsinx dx=Iとおく I=exsinx−excosx dx =exsinx−(excosx−exsinx dx)=exsinx−excosx−I 2I=ex(sinx−cosx) I= ex (sinx−cosx)+C (積分定数は最後に1つ付ければよい) |
未知関数Iの”方程式”を作って解く ”同じ向き”に2回部分積分を行う I=···−Iになれば解ける。→2I=··· I=···+Iになれば解けない。→消えてしまう 1回目の部分積分
2回目の部分積分
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≪問題3≫ 次の不定積分を求めよ。 (正しいものを選べ。暗算ではできないので計算用紙が必要。) x cosx+sinx+C x cosx−sinx+C x sinx+cosx+C x sinx−cosx+C |
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e−2x(sinx+cosx)+C
e−2x(sinx−2cosx)+C e−2x(sinx+cosx)+C e−2x(sinx−2cosx)+C |
■[個別の頁からの質問に対する回答][三角関数の不定積分について/18.8.28]
度sinx/(cosx)^3はどうやって解くのでしょうか。
また、置換でも解けるのでしょうか。よろしくお願いします。
■[個別の頁からの質問に対する回答][三角関数の不定積分について/17.11.29]
=>[作者]:連絡ありがとう.質問を正確に書いてください.唐ヘ複素積分で留数定理やストークスの定理のときに出てくる周回積分の記号です.また積分変数は? 文句を言っても始まらないので,適当に解釈して勝手に答えてしまいます.はじめに,このページを見てください. そこで次の公式をメモします. 次に 部分積分の公式に当てはめる ##高校生にはこんな問題はできません! 単なるミスプリでしょうが、例8の解答のxが+に見えます。
■[個別の頁からの質問に対する回答][三角関数の不定積分について/17.6.15]
=>[作者]:連絡ありがとう.+は1つですので訂正しました 例5は(cos3x/12)-(3sinx/4)+Cでもあってますか?
=>[作者]:連絡ありがとう.三倍角公式を逆に解いて,被積分関数を三角関数の1次式に直すのは「あり」です.ただ,結果は少し違うようです.
だから
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